電源用SPD

電源用SPDの試験規格改定について

JIS C 5381-11による要求性能及び試験方法の大幅強化

2014年に制定されたJIS C 5381-11により要求性能及び試験方法が大幅に強化され、電源用SPDの安全性はさらに向上しました。ここでは、新たに規定された信頼性試験等についてご紹介します。

電源用SPDの試験規格の改定について

試験規格改定の経緯と厳格化による安全性向上

電源用SPDの要求性能と試験方法は、IEC(国際電気標準会議)にて、1998年にIEC 61643-1として初めて制定され、その後、日本では2004年に完全翻訳JISとしてJIS C 5381-1が制定されました。日本では、従来、「保安器」「避雷器」「アレスタ」と「呼ばれ、インフラ設備を中心に導入されていた製品が、このJISの制定によりSPD(サージ防護デバイス)と用語が統一され、広く世間に普及することになりました。 この最初のSPDの規格は、識別、表示、雷に対する試験方法(電圧防護レベル、公称放電電流、インパルス放電電流等)、端子および接続のみが「要求事項」であり、その他の試験は、「要求によって試験する」に留まっています。そのため、SPDの安全性に関しては、十分とは言えませんでした。
1998年にIEC 61643-1が発行された後、IECでは2005年にIEC61643-1 Ed2.0が発行され、2011年にIEC61643-11が発行されています。一方、日本では、2005年に発行されたIEC61643-1 Ed2.0はJIS化されず、2011年に発行されたIEC61643-11が、2014年にJIS C 5381-11として制定されました。この新しいJIS C 5381-11は、SPDが故障した場合の挙動(安全に壊れること)や一時的過電圧(TOV)に対する挙動、信頼性試験等が追加され、すべてが「要求事項」となっています。よって、この新しいJIS C 5381-11に対応した電源用SPDは、従来のJIS C 5381-1に対応したSPDと比べ、遥かに安全性が向上しています。

JIS C 5381-11とJIS C 5381-1

SPD故障時の安全性確認を大幅に強化

JIS C 5381-11では非常に多くの試験が新たに規定され、特にSPD故障時の安全性確認は非常に強化されています。電源用SPDは多回数の雷電流の通電や、公称放電電流(または最大放電電流)を超える雷電流の通電等により、短絡方向に劣化、故障します。JIS C 5381-11では、このSPDの劣化から短絡故障となる過程を各段階で再現して、安全性(安全に故障する事)を確認する試験が新たに規定されました。


JIS C 5381-1の要求事項 JIS C 5381-11の要求事項 指定するSPD分離器を接続する試験 短絡電流試験装置を使用する試験
主電源 副電源
一般的な要求性能 識別 識別 - - -
表示の不滅性 表示の不滅性 - - -
電気的要求性能 感電保護 感電保護 - - -
- - 漏電電流 - - -
測定制限電圧
•電圧防護レベルUp
測定制限電圧
• 電圧防護レベルUp
- - -
動作責務試験
• 公称放電電流In
• インパルス放電電流Iimp
動作責務試験
• 公称放電電流In
• インパルス放電電流Iimp
-
- - 耐熱性試験 - - -
- - 熱安定性(下記参照) - - -
- - 短絡電流耐量(下記参照) -
- - SPDの故障モードを模擬する試験(下記参照)
- - 絶縁抵抗 - - -
- - 耐電圧 - - -
- - 低圧システム側の故障による一時的過電圧(TOV)(下記参照) -
- - 高圧システム側の故障による一時的過電圧(TOV)(下記参照)
機械的要求性能 端子および接続 ねじ、通電部分及び接続部の信頼性 - - -
- 外部導体用端子 - - -
- 空間距離及び沿面距離 - - -
- - 機械的強度(衝撃試験) - - -
環境および材料的な要求性能 - - 固体の侵入、水の浸入の耐性(IPコード) - - -
- - 耐熱性 - - -
- ボールプレッシャー試験 - - -
- - 異常加熱及び火災に対する耐熱性 - - -
- - 耐トラッキング性 - - -

 

指定するSPD分離器

SPD分離器はSPDが短絡故障した際に短絡電流を遮断し、SPDを電源幹線から分離するための過電流分離器です。 JIS C 5381-11では、製造業者が指定するSPD分離器を接続して、各種安全試験を実施するため、当社指定のSPD分離器以外の分離機器を接続した場合、SPDの安全性が確保できません。そのため必ず当社指定のSPD分離器を接続してご使用下さい。

 

熱安定性

熱安定性試験は、SPDが劣化し漏れ電流が徐々に増加した時に、安全に電源からSPDが分離できることを確認する試験です。 試験は、電圧スイッチング素子(主にGDT:ガス入り放電管およびギャップ)を短絡させた状態で行います。 SPDが動作開始する交流電圧を試料に印加し、その電圧を徐々に上昇させ、電圧制限素子(主にMOV:金属酸化物バリスタ)に流れる漏れ電流を2mAから徐々に増加させます。漏れ電流の増加に伴う電圧制限素子の発熱を素早く検知し、SPD内部の熱分離器により、SPDを安全な状態で電源から分離できることを確認します。

 

短絡電流耐量試験

短絡電流耐量試験は、SPDが短絡故障した時に、電源からSPDが安全に分離できることを確認する試験です。 試験は電圧スイッチング素子(主にGDT:ガス入り放電管およびギャップ)および電圧制限素子(主にMOV:金属酸化物バリスタ)を短絡させたSPDで実施します。SPDに指定するSPD分離器を接続し、電圧はUREF(基準試験電圧)、電流は推定短絡電流に調整した電源をSPDに接続し、短絡電流を通電します。 この試験は、SPDが短絡故障した際に、短絡電流が流れる経路(指定する接続配線、SPD内部の配線、SPD内部の熱分離器、接続端子)が指定するSPD分離器と保護協調がとれていることを確認する試験です。


SPDの故障モードを模擬する試験

SPDの故障モードを模擬する試験は、劣化/短絡故障したSPDに電源の短絡電流が通電される状態を模擬し、SPDが安全に故障することを確認する試験です。
試験は、SPDに指定する分離器を接続して実施します。最初に電流を1~20Aの範囲で調整した副電源で、SPDのUcの3倍以上の電圧を5秒間、SPDに印加します(これを前処理と呼びます)。前処理に続き、主電源で、電圧はUREF(基準試験電圧)、電流は100A、500A、1000A、推定短絡電流に設定した電圧、電流をSPDに通電します。 この試験は、SPDに内蔵する電圧制限素子を劣化/短絡故障させた後に短絡電流を流す試験のため、実際のSPDの故障状態を確認する試験となります。

SPDの故障モードを模擬する試験の試験回路とタイミング

 

低圧システム側の故障による 一時的過電圧(TOV)

低圧システム側の故障による一時的過電圧を2時間印加します。低圧システム側の故障による一時的過電圧は、低圧回路の地絡事故や短絡などで、比較的容易に生じるため、SPDは、この一時的過電圧に耐えることが良い。 昭電のJIS C 5381-11対応のSPDは、低圧システム側の故障による一時的過電圧では故障しません(耐えます)。

 

高圧システム側の故障による 一時的過電圧(TOV)

試験は、SPDに指定する分離器を接続し、基準試験電圧UREFを印加します。この状態で、高圧システム側の故障による一時的過電圧を1秒間印加します。 高圧システム側の故障による一時的過電圧の発生確率は低いため、試験後にSPDは故障しても良く、試験は「耐える」または「安全に故障する」ことを確認します。 昭電のJIS C 5381-11対応のSPDは、接地間にGDT(ガス入り放電管)またはギャップを実装することで、接地間の過電圧で動作しない、あるいは動作し故障しても絶縁を維持することができます。

 

一時的過電圧(TOV)

一時的過電圧(TOV)の試験は、SPDの故障原因の1つである電源電圧の一時的上昇に対するSPDの挙動を確認する試験です。電源電圧の一時的な上昇は一時的過電圧(TOV:temporary overvoltage)と呼ばれ、比較的に発生確率の高い「低圧システム側の故障」によるものと、発生確率の低い、「高圧システム側の故障」によるものがあります。 このTOV電圧は各国の電源システムにより異なります。しかし、JIS C 5381-11では、IEC(ヨーロッパ)システムのTOVが記載されており、日本のTOV電圧と合っていません。現在IEC SC37A WG3およびWG5での審議を経て、次のIEC改訂では、日本のTOV電圧を追記することとなっています。現在、IECで審議中の日本の電源システムにおける基準試験電圧UREFとTOV電圧を次に示します。


基準試験電圧UREF 低圧システム側の故障による一時的過電圧(120分) 高圧システム側の故障による一時的過電圧(1秒)
L-N L-PE L-L N-PE L-N L-PE L-L N-PE L-N L-PE L-L N-PE 試験電流
単相3線 中性線接地 100V/200V 110V 110V 220V - 220V 220V - - - 820V - 600V 30A
単相2線 1線接地 100V 110V 110V - - 145V 145V - - - 710V - 600V 30A
単相2線 1線接地 200V 220V 220V - - 290V 290V - - - 820V - 600V 30A
単相2線 中性点接地 200V - 110V 220V - - 220V - - - 710V - 600V 30A
三相3線 Δ結線 1線接地 200V 220V 220V 220V - 290V 290V - - - 820V - 600V 30A
三相4線 Y結線 中性点接地 100V/173V 110V 110V 191V - 190V 190V - - - 710V - 600V 30A
三相4線 Y結線 中性点接地 240V/415V 255V 255V 440V - 440V 440V - - - 855V - 600V 300A
単相3線 中性線接地 100V/200Vと
三相3線 Δ結線 1線接地 200Vで接地相共用
単相3線 中性線接地 100V/200Vおよび 三相3線 Δ結線 1線接地 200Vと同様 330V 330V - - 単相3線 中性線接地 100V/200Vおよび 三相3線 Δ結線 1線接地 200Vと同様

カタログ・取扱説明書

名称 データ形式 データサイズ ダウンロード
雷害対策総合カタログ PDF 18.5MB ダウンロード
SPD製品ガイド PDF 10MB ダウンロード
CADデータ DXF ダウンロード

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