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雷害対策の基礎知識サージ防護デバイス

建物内の各機器を雷サージから防護します

オフィスや家庭などの機器に、落雷の影響で過電圧・過電流が侵入すると機器やその中のデータが一瞬で破壊されます。対象となる機器と雷サージの侵入ルートに合ったSPDを設置し、雷サージを安全に放流することで雷害から機器等を守ることができます。建物内部の電源設備、通信機器を雷サージから防護するためにSPDの設置や等電位ボンディングを構築することが必要です。特にJIS化に伴い、大電流に対応するSPDが必要になりました。雷保護システム関係のJISや保護性能向上に向けた昭電独自の取り組みなどをご紹介します。

雷サージ防護対策とは

SPDを用いて雷サージの機器への侵入を防護する方法

雷電流およびその分流電流並びにそれに起因する電気磁気的な影響で発生する誘導過電圧(雷サージ)から建物内の設備機器を防護するための対策です。その領域と雷エネルギー量に見合う最適なSPDを選定して設置し、雷サージを安全に放流することで機器を保護します。
SPDを設置すると、電源または通信回線から侵入した雷サージは、SPDの内部を通過し、それぞれの出口となる電源・通信回線へ放出されます。雷の通過経路になりやすい通信機器に安全な「逃げ道」を用意することで、大切な機器とデータを過電圧・過電流から安全に保護します。雷サージ侵入時も電源を切らずにそのまま機器を使用することができ、SPD自体も繰り返し使用できます。

公共建築工事標準仕様書(電気設備工事編)令和4年版

PV直流用SPDの試験規格にJIS C 5381-31が追加

PV(太陽光発電設備)におけるPV直流用SPDの試験規格としてJIS C 5381-31が追加されました。また、低圧用SPD、PV直流用SPDにおいてSPD分離器に要求する遮断性能をSPDに内蔵できるとの記載が追加されました。公共建築工事標準仕様書におけるSPDの要点を以下に示します。

  • 1. 低圧用SPD

    低圧用SPDは、JIS C 5381-11「低圧サージ防護デバイスー第11部:低圧配電システムに接続する低圧サージ防護デバイスの要求性能及び試験方法」に対応する必要があります。

    ・低圧用SPDクラスⅠの性能は、特記によります。

    ・SPDの表面には正常な状態か故障しているか判別できる表示を行う必要があります。

    ・SPD分離器は、設置箇所における短絡電流を遮断できるものとし、遮断性能は、SPD本体に内蔵することができます。

    ・低圧用SPDの接地線は、クラスⅠは14mm2、クラスIIは5.5mm2以上とし、防護対象機器と同一の接地に接続する必要があります。

  • 2. PV直流用SPD

    PV直流用SPDは、特記により設けるものとし、内蔵又は附属する場合は、JIS C 5381-31「低圧サージ防護デバイスー第31部:太陽電池設備の直流側に接続するサージ防護デバイスの要求性能及び試験方法」に対応する必要があります。PV直流用SPDクラスIIの性能は、特記がなければ下表によります。

    ・PV直流用SPDクラスⅠの性能は、特記によります。

    ・SPDの表面には正常な状態か故障しているか判別できる表示を行う必要があります。

    ・SPD分離器は、設置箇所における短絡電流を遮断できるものとし、遮断性能は、SPD本体に内蔵することができます。

  • 3. 通信用SPD

    通信用SPDは、JIS C 5381-21 「低圧サージ防護デバイスー第21部:通信及び信号回線に接続されるサージ防護デバイス(SPD)の要求性能及び試験方法」により分類されるカテゴリC2又はD1の性能を要求しています。カテゴリの性能は下表によります。

    通信用SPDは、取替えの際、通信及び伝送信号に障害を生じさせないものとし、プラグイン形又はモジュール形端子板用の差込み形とする必要があります(LAN及び同軸ケープル用SPD等で本体が伝送路となる専用コネクタ方式のSPDを除く)。

建築設備設計基準(令和3年版)

接地線の指定、最小断面積追加などの改定

雷保護設備において、一部用語の見直しおよび、SPDの接地線に関する要件が追加されています。改定箇所は以下のとおりです。

•用語:雷保護領域→雷保護ゾーン

•用語:遮へい→遮蔽

•SPDに使用する接地線の指定、最小断面積が追加されました。SPDに使用する接地線は、EM-IE とし、太さは下表によります。

表3-4 SPDに使用する接地線

SPDの種類 SPDの種類 最小断面積[mm2 接地線の太さ
低圧用SPD  クラスⅠ 14 14mm2以上
クラスⅡ 5.5 5.5mm2以上
クラスⅢ 1 1.2mm 以上
通信用SPD カテゴリC2、D1 1 1.2mm 以上

社団法人公共建築協会評価書

品質や性能の基準を満たしている製品に交付される評価書

社団法人公共建築協会が建築材料・設備機材の品質や性能等を評価し、その基準を満たしているものに交付されます。交付後は国土交通省へ報告されるほか、同協会が発行する公共建築工事標準仕様書等にも紹介されます

  • 評価書

    本評価書は営繕工事の公共発注者が行う監督業務の簡素化および迅速化を図るため、営繕工事において標準的に使用される材料・機材等のうち重要なものを対象とし、通常各工事現場において確認している品質・性能等において、あらかじめ審査を行い交付されます。



    評価の結果

    1. 国土交通省大臣官房官庁営繕部監修「公共建築工事標準仕様書(電気設備工事編)」に適合する品質・性能が確保されている
    2. 適切な品質管理・製造管理が行われている
    3. 納入体制が整備されている
    4. アフターサービス体制が整備されている

雷保護対策の考え方

総合的な雷保護対策

従来国内では、直撃雷の建物への保護としての雷保護設備(雷保護システム)と設備機器の雷保護が別々に構築されていました。瞬間的に巨大なエネルギーを発生する雷への対策としては、両者を総合的に実施することが効果的であり、特に設備機器への保護効果は絶大です。

雷保護システム

直撃雷による建物の火災や破壊、人体の損傷などの直接的な被害を防ぎ、建物内部での異常な過電圧を防止する。受雷部、引下げ導線および接地システムからなる「外部雷保護システム」と等電位ボンディングや安全離隔距離の確保を含む「内部雷保護システム」とで構成される。

雷サージ防護対策

雷電流およびその分流電流並びにそれに起因する電気磁気的な影響で発生する誘導過電圧(雷サージ)から建物内の設備機器を防護する。

雷保護システム関係のJIS

JIS Z 9290-1 2014 雷保護-第1部:一般原則
JIS Z 9290-3 2019 雷保護-第3部:建築物等への物的損傷及び人命の危険
JIS Z 9290-4 2016 雷保護-第4部:建築物内の電気及び電子システム
JIS C 5381-11 2014 低圧サージ防護デバイス-第11部:低圧配電システムに接続する低圧サージ防護デバイスの要求性能及び試験方法
JIS C 5381-12 2021 低圧サージ防護デバイス-第12部:低圧配電システムに接続する低圧サージ防護デバイスの選定及び適用基準
JIS C 5381-21 2014 低圧サージ防護デバイス-第21部:通信及び信号回線に接続する低圧サージ防護デバイス(SPD)の要求性能及び試験方法
JIS C 5381-22 2018 通信及び信号回線に接続するサージ防護デバイス(SPD)の選定及び適用基準
JIS C 5381-31 2020 低圧サージ防護デバイス-第31部:太陽電池設備の直流側に接続するサージ防護デバイスの要求性能及び試験方法
JIS C 5381-32 2020 低圧サージ防護デバイス-第32部: 太陽電池設備の直流側に接続するサージ防護デバイスの選定及び適用基準

雷保護領域とSPDの選定

雷保護領域(LPZ)とSPD

JISでは、各雷侵入領域別に雷保護領域(LPZ*1)区分を行っています。その領域と雷エネルギー量に見合う最適なSPDを選定する必要があります。

JISで規定する機器の定格インパルス電圧

機器の定格インパルス電圧と雷保護協調を確保

低圧電源に接続される機器は、その使用等級を区分するため、機器の過電圧カテゴリ(Ⅰ〜Ⅳ)に分類され、必要な機器の定格インパルス電圧が決められています。また、その機器の定格インパルス電圧と雷保護協調を取るために適切なSPDの保護レベルを選定する必要があります。

直撃雷の波形

10/350μsのエネルギー比は8/20μsの20倍

従来、国内における雷電流波形は、JECやその他の規格においても8/20μsが主流でしたが、現在JISにおいては直撃雷の電流波形を10/350μsとしています。10/350μsと8/20μsの電流波高値を同じとした場合、そのエネルギーの違いは下図のように面積に置き換えて比較できます。そのエネルギーの比は8/20μsに対して10/350μsは約20倍以上となります。

SPD分離器の重要性

SPDの発火、焼損、さらには火災の原因となる故障時の短絡電流への対応

SPDは定格以上の雷サージ電流の通電や定格以内の雷サージ電流であっても、それが繰り返し通電された場合、または定格を超える一時的過電圧(TOV)が印加された場合、一般的なクラスⅡSPDは、短絡方向に故障します。この時、SPDを接続している電源幹線からSPDを安全に切り離しができない場合、SPDは発火、焼損し、最悪の場合、火災の原因となります。
そのため、SPDには短絡故障時に安全に電源幹線からSPDを切り離す機構(SPD分離器)が必要です。一般的には、内部素子の漏れ電流の増加時に動作するSPD内部の熱分離器と、SPDの内部、外部または両方に実装し、SPDの短絡故障時に生じる短絡電流で動作する過電流分離器(電流ヒューズ、MCCB等)で構成し、SPDが劣化した場合、どちらかの分離器でSPDを安全に電源幹線から切り離すことが必要です。
また、電流ヒューズ形のSPD分離器(SFD)は、2013年12月に製品規格(JEITA RC-4501)及び適用規格(JEITA RC -4502)が制定され、SPD分離器に要求される性能や適用方法が明確に規定されました。この規格では、必要な雷サージの通電性能を有し、かつ故障したSPDを早期に分離する定格電流の低いヒューズを要求しています。また、この規格の付属書では、日本のようなTTシステムでは、短絡電流がシステムの接地抵抗値に依存し、システム毎に異なるため、SPD内部の熱分離器とSPD分離器の両方で、全領域における短絡電流の遮断を要求しています。当社の電源用SPD AGN-4シリーズ及びPV用SPD ADN,DNシリーズではSPD内部の熱分離器の遮断性能(SIT)を明確にし、指定するSPD分離器の接続により、SPD故障時の短絡電流を全領域において遮断(SITS®)を可能としました。