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プロジェクト・ストーリー 1
「サンダーブロッカーPro」開発秘話
DX時代に、雷害から守る。
昭電発の一般向け高性能SPDとは?
1990年代後半、PCや高機能家電の普及、ネットワーク環境が急速に変化を遂げ、雷害によるデータ消失やアプリケーション破損等の被害が増加していきました。そんななか、昭電は1999年に初めての一般民生用SPD「サンダーブロッカー」を発表。そして2022年には、さらに進化するDX環境に対応すべく高性能でJISに適合した民生用SPD「サンダーブロッカーPro」を開発。初代サンダーブロッカーLAN用、TV用に続き3回目のグッドデザイン賞を獲得し、「高性能をどこでもだれでも簡単に」のコンセプトのもと家庭やオフィスの雷害対策製品として広く認知されています。今回は、そんな「サンダーブロッカーPro」誕生にまつわる逸話とともに、これからのSPD製品の方向について開発メンバーに語っていただきました。
「サンダーブロッカーPro」 開発プロジェクト・メンバー(代表)
CHAPTER 1
1999年、
初代「サンダーブロッカー」誕生!
「これからは一般の生活者が使えるSPDが必要だ!」
先代・太田昭吾社長(故)の熱い想いから、そのプロジェクトは始まった。
「サンダーブロッカー」の誕生は1999年。「サンダーブロッカー」を開発した背景はどのようなものだったのですか?
- 当時、一般家庭でPCや高機能家電製品などが普及し、情報機器も多様化していく一方で、雷によってPCが故障し、ネットワークに接続できない被害が増加していました。私が入社した25年前は、昭電ではおもに産業向けSPD(当時は、保安器、避雷器と呼ばれていた)を作っていましたが、こうした時代の動きを敏感に感じ取った当時社長の太田昭吾(故)の「これからは一般の民生機器を雷害から守るSPDが必要だ!」という強いメッセージを受け、プロジェクトがスタートしました。
入社してすぐにプロジェクトに関わったのですか?
- そうです。実は私が入社した年に、現社長の太田光昭(2005年社長就任)も入社されました。現社長は入社される前、他社でプロダクトデザインを担当されており、現社長がデザイン担当として加わったことでプロジェクトが加速しました。
初代「サンダーブロッカー」開発の思い出を語る垣内と膨大な開発計画書
当時、一緒に開発に携わった太田光昭社長はどんな存在でしたか?
- プロダクトデザインの経験がある現社長は、新人で何も分からない私とは最初から「視点が違うな」という印象がありました。当時、現社長が特にこだわっていたのは「コンシューマー向けのデザイン性が強い製品をつくる」ということでした。その上で、「作るからには他にはないカッコいいものにしよう!昭電のイメージリーダーになるようなものを作ろう!」と、自分から積極的にアイデアを出して、少しでも疑問を感じたら妥協なく改善するなど、自分の仕事に対しても厳しかったですね。
実際に「サンダーブロッカー」はグッドデザイン賞を受賞しましたが、当時はどう感じましたか?
- 現社長は、当初から「グッドデザイン賞を取る!」と言っていましたが、私にはイメージができませんでした…(笑) 特に驚いたのが、それまで産業用のSPD製品は黒のケースが常識でしたが、初代「サンダーブロッカー」は清潔感のあるライトグレー系のカラーに統一し、その形も独特だったことです。1999年に最初の「サンダーブロッカーとして、電源コンセント用を発売、続く2000年にはLAN用を発売しました。LAN用は、丸みのある「俵型」デザインが評価され、グッドデザイン賞を受賞しました。最初、この「俵型」デザインは私にはちょっと不思議な感じがしたのですが、今ではとてもなじんでいるなと思っています。2002年にはテレビ用を開発し、こちらもグッドデザイン賞を受賞しました。
LAN用(左)は2000年、テレビ用(右)は2002年に、グッドデザイン賞を受賞
CHAPTER 2
そして、2022年「サンダーブロッカーPro」へ
コンセプトは「高性能をどこでもだれでも簡単に」。
ますます進化するデジタル時代に応えるために
「サンダーブロッカーPro」の開発には、極めて高い開発のハードルがあった。
「サンダーブロッカー」から「サンダーブロッカーPro」が発表されるまで約20年。
奥主任はプロジェクトのスタート時から参加されたそうですが、どんな環境で仕事をされていましたか?
- 私の入社当時は、初代「サンダーブロッカー」が販売されてから十数年経っていました。今回のプロジェクトがスタートするにあたり、主に構造設計や基板設計を担当しました。初代「サンダーブロッカー」を発売した当初はJISが現在のように設備されてなく、社内基準で安全性を担保していました。それが2014年にJISが新しく改訂され、より安全性への要求が高くなったのです。
「サンダーブロッカーPro」開発は、初めからかなり厳しい条件下で進められていた?
- そうですね。初代「サンダーブロッカー」は新しいJISには対応していないことと、時代とともにIT機器の性能向上やLANの通信速度も速くなり、そうした環境に対応しきれないという課題もあり、新しい技術や通信に対応できる製品へのリニューアルが求められました。開発のハードルは厳しいと感じました。
- 実は、他社も民生用のSPD製品を出していますが、JISをクリアしていません。今回の「サンダーブロッカーPro」の開発のポイントは、他社に先駆けて昭電が新しいJIS適合の製品を作ったところにあり、それは昭電だからできた独自の技術だと思っています。
JISへの対応は、とても大変だったと聞きましたが…
- そうですね。例えば電源用SPDの要求性能と試験方法は2014年にJIS C 5381-11として制定されましたが、この要求事項には非常に多くの試験項目があります。特に、JISでは「一つの試験あたり3台のサンプルで試験すること」と記載されています。その要求項目を満たすためには他にも様々な試験が必要で、その項目は何十種類とあります。私はその試験の一つひとつを何か月もかけて繰り返しました。特に電圧や短絡電流の試験などをクリアしていくのは、ものすごく時間がかかる気の遠くなる仕事でした。
- あの頃はひたすら試験を繰り返していましたよね…(笑)
- JISでは電気的に機器を保護する制限電圧という条件があって、機器を保護するのに電圧を1500V以下にする仕様になっています。しかし製品にはケーブルが必要で、そのケーブル長によるインピーダンスを含めて1500Vという仕様をクリアしなくてはならず、何回も何回も試験しました。特に、コンセントに差し込むケーブル長とそこにかかる電圧については、仕様の範囲内に納めるための試験を繰り返しました。みんなで一緒になって、中のレイアウトやケーブルの長さを変えたり、設計を見直しながら何回も何回も雷を落として試験を続けました。その確認・評価の繰り返し作業は、本当に気が遠くなる仕事でした…(笑)。
CHAPTER 3
グッドデザイン賞へのこだわり
「サンダーブロッカーPro」で、グッドデザイン賞を取る!
開発メンバーの強い思いと挑戦。
グッドデザイン賞を受賞した「サンダーブロッカーPro」のデザイン開発について聞かせください
- プロダクト・デザイナーとは何度も打ち合わせを重ね、デザインを絞り込んでいきました。最終的にはエッジの効いたシャープなデザインになりましたが、当初は丸みを帯びたデザインなどの提案もあり、ケースカラーもいろいろ提案していただきました。シルバー・メタリックや艶のあるブラック、清潔感のあるホワイトの案もありました。当初、我々にはSPD製品はグレーっぽいイメージがあったのですが、「せっかく新しく作るのだから、製品に高級感を与えてみては?」という現社長からのアドバイスもあり、従来のSPD製品にはないデザインにまとめることができました。展示会に出した際も、最初「これ、なに?」と興味を示してくれる人も多く嬉しかったですね。
製品に表示されているロゴマーク・デザインも新しくなりましたね。
- 「サンダーブロッカーPro」のProの意味は、新しいニーズに新しい技術・性能で対応していることを表しています。コンセプトも「(プロユースの)高性能を、どこでも、だれでも、簡単に」という高い信頼性を表しています。そんな背景から、ロゴマークもデザイナーに依頼してたくさん案を出してもらいました。何十種類に及ぶ案のなかで「製品の機能がダイレクトにイメージできるマークがいい」という視点で選んでいった結果、「盾で雷をブロックする」ことが一目で分かるシンプルな案に決定しました。「サンダーブロッカー」なので、強い線でグルっと囲んで盾で雷をブロックしている図柄は分かりやすいと思います。
- ロゴマークの決定には「サンダーブロッカーPro」の開発に携わったすべてのメンバーが投票を繰り返し、いろいろな意見を交わしながら最終形が決まっていきました。「グッドデザイン賞を取るぞ!」という開発メンバーの思いをまとめて、多くの日数をかけて製品としての完成度を上げ、プロダクトデザインもマークデザインも詰めてきたので、私には賞を取る自信がありましたね…(笑)。
- 私は正直、不安でした。私はこうしたプロジェクトは初体験だったので、すべて未知数でした。
- そもそも、こうしたSPD製品の分野でグッドデザイン賞に応募するということが珍しいと思います。そのなかでコンセプトを実現するサイズ、機能にこだわり、さらにJISに適合するために苦労を重ねて製品づくりをしたので、見た目もオフィス機器としてスタイリッシュな感じもある。私も賞は取れると期待していました。
- もともとSPDは分電盤とか箱の中に入っているものなので、今までは一般の人の目につきにくいものでした。それを「サンダーブロッカーPro」は、PCの横やルーター、USBコネクタと同じ場所に並べる製品として認められました。「こういう製品は昭電ではないと作れない」という自信も生まれました。
機能とデザインを高い完成度で凝縮。オリジナル・ロゴマーク入り「サンダーブロッカーPro 」
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実際にグッドデザイン賞の知らせが届いた時はどんな気持ちでしたか?
- 会場にすべての応募製品が並べられた時、まず出品できたことがすごく嬉しかったですね。後日、「受賞!」という連絡が会社に来た時は、みんなで手を取って喜び合いました。
- やはり、正直嬉しかったです。開発者として、こういう経験はなかなかできません。応募した時は不安の方が大きく「賞は無理なんじゃないかな」とも思っていましたが、実際に賞が取れた時はとても嬉しかったです。でも垣内次長はさらに上を狙っていて、賞を取った製品の中から選ばれる「特別賞」が取れず、すごく悔しそうにしてましたね…(笑)
- 私も本当に嬉しかった。こみ上げてくるものがありました。こういう製品は一日二日でできるものではなく、何年も改善を積み重ねて完成したものです。それが「グッドデザイン賞」という形で世の中に認められ、こんなに喜びはありませんね。
発売後の「サンダーブロッカーPro」の反響・評判はどうでしたか?
-
私はよく展示会で説明しますが、その時にお客様から「とても便利な製品だね」と言われたことがあります。特に電源コンセントの所で雷サージを逃がしてくれるのは安心だし、「工事が不要で使いやすい」、また、DINレールやねじで取り付けできて、好きな場所に固定できる。しかもデザインがシンプルでカッコいいので「いろいろな人にお薦めできる」とも言われました。「さすがグッドデザイン賞を取っただけのことはあるね」と、お褒めの言葉をいただきました。
CHAPTER 4
「サンダーブロッカーPro」の次へ
ますます進化するDX時代に。
SPDは、分野やニーズを超え新しいステージへ。
ICTやIoTなどDX化が進むなか、「サンダーブロッカーPro」の次の製品などを考えていますか?
- 私たちは「サンダーブロッカーPro」の実績やノウハウを引き継いで、すでに新しい製品開発に取り組んでいます。「サンダーブロッカーPro」は一般の人がだれでも簡単に使えるというコンセプトで開発しました。次は「サンダーブロッカーPro」のメリットを活かして「産業分野に特化した使いやすいSPDを作ろう」と考えています。その一つがACM(アスリート・カスタム)シリーズです。
- ACMシリーズは、状態表示と警報接点出力を標準装備しています。また、配線はコネクタ接続ののため容易(コネクタ・イン)になっています。単相AC100V、200V用、直流用(DC12V/24V/48V用)、監視カメラやLAN同軸コンバータに使えるBNC用をラインアップしています。
「サンダーブロッカーPro」の技術を継承した産業用ACMシリーズ
昨今、雷害対策はますます重要になっていくと思います。
今後、だれもが安心して備えられるSPD製品の環境はどうなっていきますか?
- SPDの必要性については、今、公共施設やインフラ施設などでは「SPDを設けなければならない」ということが常識になっていますが、オフィスビルやマンション、一般住宅では、まだまだ十分とは言えません。「サンダーブロッカーPro」は、こうした現状に対応できる製品として一般に知られつつありますが、それ以上に今後は「家庭の分電盤にすでにSPDが付いていて、雷が家の中に侵入しないシステムで守りましょう」ということが常識になっていけばいいと思います。電源ごとピンポイントで守るのではなく、まず建物に雷が侵入しないシステムなど、私たち昭電が個別のニーズに対して製品を通してキメ細かく関わっていくことが重要だと思っています。
価値あるXを、確かな安全とともに。